モナリザを巡る冒険 その1 モナリザは本物か??
この記事は2005年に書かれたものです。
年末短期集中連載読み物
モナリザは本物か??
そんな疑問から始まった探求の顛末。
古本屋でアート関連の棚を眺めていたら、『モナリザへの旅』という本が目に留まった。
ぱらぱらページをめくると。。。
この本は興味津々なのだった。
で、買うことにする。
『モナリザ』がルーブル美術館から盗難にあったのは有名な話(1911年)なのだが、(その時に、良く出来た贋作にすり替えられたのではないか?という疑惑は、よく噂されるところだ=しかも御丁寧にガラスケースの中に入っているので、本物かどうか?判別不能 笑)モナリザの真作が複数存在するという話は初耳だった。
そう言われてみると、たしかにプラド美術館にはモナリザに良く似た作者不詳の模写が飾ってあったのを思い出した。
で、その時は、単純に”似てないな”と思った(笑)に過ぎなかったわけだけれども、モナリザが複数制作されていたという視点から捉えると、この”似ていない”という印象は、全く別の意味を帯びることになる。
よく考えると、この絵は下手じゃないにも関わらず、”似てない”のである。
ということは、つまり、この絵は、"別の「モナリザ」"を模写したものではないか?ということが考えられるのだった。
おそらく世界で一番有名な美術史家といわれるヴァザーリの『美術家列伝』
には、モナリザについてこう書かれている そうだ。(孫引きです)
「真珠色にあわく潤んだ目は、自然の輝きをたたえ、もっとも繊細で巧妙な技法によってはじめて描き得たものである。
まつ毛はまた繊細きわまりない感覚なくしては、とうてい描き得ないものである。
眉毛はあくまで自然で、毛が肌から生じて、片方が濃く、片方がいくらか薄く、毛根によってさまざまに変化している様子が描かれているため、これ以上に自然であることは不可能である。」
でも、一目見ればわかるように、モナリザは真珠色の目はしていないし、”まつ毛も眉毛も無い。”(笑)
ヴァザーリが書いている絵の説明は、あきらかに『別の絵』の説明だ。
このヴァザーリという美術史家はその権威があまりにも巨大なため、私達の目を曇らせているということがありそうだ。
そもそも、この『美術家列伝』は、そうとう間違っているらしい。
でも、美術史を勉強すると、あたかもそういう事実があったように教えられてしまうので、結局事実が歪められてしまうのではなかろうか?
歪められた事実を正すには、まず『一次情報』を知ることが何より大切である。
この場合、『一次情報』を知るとは、すなわち”絵を実際に見る”ことである。
ヴァザーリが書いている絵の説明は、あきらかに『別の絵』であることはわかった。
では、その絵は何の絵だったのだろうか?
ひとつ考えられることは、この説明が『チェチリア ガッレラーニの肖像』(別名”白貂を抱く貴婦人”)
を見た時の記述なのではないか?ということだ。
先ほどのヴァザーリの記述を良く読んでみよう。
「真珠色にあわく潤んだ目は、自然の輝きをたたえ、もっとも繊細で巧妙な技法によってはじめて描き得たものである。
まつ毛はまた繊細きわまりない感覚なくしては、とうてい描き得ないものである。
眉毛はあくまで自然で、毛が肌から生じて、片方が濃く、片方がいくらか薄く、毛根によってさまざまに変化している様子が描かれているため、これ以上に自然であることは不可能である。」
まさにその通り。目に美しく素晴らしい傑作である。
この絵を素晴らしくないという人は余り多くないと思う。
しかし、モナリザは???という人が、実はすごく多いような気がしている。
僕が前から思っているのは、本当は『モナリザ』の評判というのは、誤って伝えられた誤解から生じていて、本当の評判は、こちらの『チェチリアガッレラーニの肖像』だったのではないか?ということなのだ。
そうすると、様々なことが納得できるような気がする。
が、しかし、『モナリザへの旅』で、複数のモナリザが制作されている可能性について知ると、別のモナリザこそが最高傑作と呼ばれていた可能性も、またあるかもしれないと思うようになった。
『モナリザへの旅』によると、真作が疑われている極めつけの3点は、
ニース版の『モナリザ』
ヴァーナン版の『モナリザ』
アイルワース版の『モナリザ』
であるらしい。
これらの『モナリザ』の所有者達は、それぞれが、自分の『モナリザ』こそがレオナルドの真筆だと主張しているそうだ。
実際に、それがレオナルドの真筆なのか?あるいは違うのか?は、はっきりしていないのだが、少なくても、レオナルドと同時代に描かれたことは確かで、それが弟子、あるいは周辺にいた画家によって描かれた模写なのか?それとも、レオナルドが同時並行的に書き進めていたものかも明らかになっていない。
模写だとしても、前にも述べたように、レオナルドが『モナリザ』を複数描いている可能性については否定できない。
ラファエロによる『モナリザ』の模写も、いわゆる『モナリザ』には全然似ていない。
そして、あのラファエロが、そんなに下手なわけはないことは、誰でも分ることだ。
やはり、レオナルドは、『モナリザ』を複数描いている。
ただ、それが現存するかどうか?は不明だ。
で、僕は直接この絵を見たことが無いので、断定は出来ないのだが、一般的には、本物の『モナリザ』よりも、これらの真作が疑われている『モナリザ』の方が美しいという人が多いとのことである。
とはいえ、もしも、これらの絵が、レオナルドの真筆、つまり、もう一つの『モナリザ』だったとしても、図版で見る限り、本物の『モナリザ』よりは美しいかもしれないが、例えば前述した『チェチリア ガッレラーニの肖像』より美しいか?といえば、NOと答えざるを得ないだろう。
話としては面白いが、この絵を”世紀の傑作”と呼ぶには、あまりにふつうなのである。
あまりにふつうな絵が最高傑作と呼ばれることは、どう考えても無理がある。
それならば、ルーブルの『モナリザ』の方が、まだ分る。
この絵は、最高傑作かどうか?はともかくとして、たしかに何かがひっかかるのだ。
では、『モナリザ』とは、本当な何なのだろうか??
つづく
モナリザを巡る冒険 その1 モナリザは本物か??
http://guild3.exblog.jp/15749199/
モナリザを巡る冒険 その2 『聖アンナと聖母子』のカルトン
http://guild3.exblog.jp/15768372/
モナリザを巡る冒険 その3 『モナリザ』とは何だったのか??
http://guild3.exblog.jp/15811280/
by guild-01 | 2013-12-27 19:34 | ART